ヤードのいくつかは自動車窃盗で車の保管場所などとして利用されている!?
自動車窃盗の温床といわれているのが「ヤード」です。
一般的にヤードは金属スクラップの集積場所としては不可欠な存在です。
ところが自動車窃盗では「偽造拠点」として使われています。
一見合法的に見えても、内部では非合法な活動が日夜行われています。
では、ヤードとは一体どんなところなのでしょうか。
今回は、自動車窃盗犯の偽造拠点「ヤード」についてわかりやすくご紹介します。
ヤードとは何か?
ヤードとは、周囲が鉄柵などで囲まれた作業場のことです。
一般的によく使われているのは金属スクラップ工場などです。
自動車用語ではヤードは「自動車解体工場」のような意味で使われています。
運営業者はまじめに仕事をしている人たちがほとんどです。
日本一「ヤード」が多いのはどこ?
現在、日本一「ヤード」が多いのは千葉県です。
県内には約700か所以上のヤードが存在しているといわれています。
その多くは佐倉市や四街道市などの印旛地域に約60%が集中しています。
また千葉県内のヤードのいくつかは自動車窃盗で車の保管場所などとして利用されていることが報告されており憂慮すべき事態です。
警察や行政も把握できないヤードが多いこともいわれています。
外国人経営者のヤードが増えてきた
実は現在、日本国内のヤードは、外国人経営者が増えている傾向にあります。
彼らはバラバラではなく1つのエリアに数10カ所くらい集中しています。
例えば埼玉の松伏町は、9割以上が外国人が経営しているヤードです。
国籍はガーナ、パキスタン、カメルーン、ナイジェリア、アフガニスタン、ベトナム、中国、タイなどさまざまです。
外国人であることから、意思の疎通が難しく、なかなか行政指導がしにくいといわれています。
自動車窃盗の拠点として使われるヤードとは?
自動車窃盗の拠点として使われるヤードとは、自動車窃盗後の車の保管・解体・偽造・コンテナ詰めをワンストップでできる作業場のことです。
自動車窃盗に関係する自動車窃盗実行犯、解体係、偽造係、密売業者などが密会する場所としても使われています。
周囲は塀、垣、柵、コンテナで囲まれて、外部からは見えない構造です。
内部には作業員宿舎まであります。
自動車窃盗の拠点として使われるヤードの一番の目的は盗んだ車を海外へ輸出することです。
一般的に自動車窃盗のヤードは、通行人が外から見えないように、立ち入りができないように造られています。
「正規のヤード」と「不法ヤード」の違い
正規のヤードと不法ヤードの違いは、条例を守っているか、守っていないかが違います。
条例とは「ヤード内保管等の適正化に関する条例」のことで、通称「自動車ヤード条例」といいます。
自動車ヤード条例を守れているヤードは正規のヤードで、守れていないのは不法ヤードです。
「自動車ヤード条例」が施行されたことで、ヤード内への立入検査がしやすくなり、同時に自動車窃盗の拠点として使われるヤードを発見しやすくなりました。
立入検査では何を検査しているのか?
ヤードへの立入検査では次の3点を検査しています。
- ヤードの届出義務
- 油の地下浸透等の防止措置の義務
- 原動機を受け取る際の相手方確認等の義務
とくに(3)が条例に記載されたことで、自動車窃盗の拠点として発見しやすくなりました。
自動車窃盗のヤードで保管された車は最終的にどうなるのか?
自動車窃盗のヤードで保管された車は最終的に海外へ輸出されるか、スクラップのいずれかにされます。
自動車窃盗のヤードで保管された車の流れは次の通りです。
- 車台番号の改ざん・ナンバープレートの入れ替え、書類の改ざんがされる
- 一旦バラバラにされたり、部品を抜き取られたり、部品の入れ替えをされたりする
- 事故車の車体番号に偽造された車は税関を抜けて盗難車と認識されないまま海を渡ってしまう
- 海外についたらただの日本製の中古車として堂々と現地で販売される
- 不要になった車体やパーツはヤード内で証拠隠滅のためにスクラップにされる
一般的に、自動車窃盗のヤードで保管された車は(1)~(5)の流れで、輸出されるか、スクラップにされ、もう二度と持ち主の前には帰ってくることがありません。
以上が盗まれた車の運命です。
自動車窃盗のヤードの危険性とは?
自動車窃盗のヤードにはどんな危険性があるのでしょうか?
こちらでは自動車窃盗のヤードの危険性についてご紹介します。
① 国際犯罪組織が関与している
自動車窃盗のヤードは、国際犯罪組織が関与しています。
理由は日本国内で計画的に車を盗み、大量に海外に輸出しているからです。
小規模な組織や個人ではほぼ不可能です。
具体的には暴力団やマフィアの下部組織だと思われます。
② 不法滞在外国人の働き場所になっている
自動車窃盗のヤードは、不法滞在外国人の働き場所になっています。
自動車窃盗は最終的には海外に輸出するため外国人の協力が不可欠です。
当然正規のルートで入国した外国人は自動車窃盗のヤードでは働かないので、不法滞在の外国人を働かせています。
③ 違法薬物の製造・使用・保管場所にしている
自動車窃盗のヤードは、違法薬物の製造・使用・保管場所にしています。
ヤード内は外からは見えないので、覚醒剤などの違法薬物を製造しているところもあります。
最新のニュースでは2024年2月5日に、末端価格1億円分の覚醒剤の製造が摘発されました。
まとめ
今回は、自動車窃盗犯の偽造拠点「ヤード」についてご紹介しました。
自動車窃盗のヤードは増加傾向にあり、ますます巧妙化しています。
実際自動車窃盗のヤードであっても、パッと見は普通の自動車解体業者のように見えます。
そのため中々見破ることが困難です。
今後はヤードの規制をさらに強化し、より立入検査がしやすい環境づくりをすることが求められています。