税関検査の仕事内容や実情を理解すれば、「水際に達する前」に盗難を食い止める重要性がわかる!
自動車窃盗対策の最後の砦(とりで)といわれているのが「税関」です。
その理由は、もし盗難車とわかれば税関で輸出を「ストップ」できるからです。
ところで本当に税関では盗難車と正規輸出車の違いを見抜けるのでしょうか。
今回は、盗難車を「税関」は見抜くことができるのかについて、どこよりもわかりやすくご紹介します。
そもそも「税関」とは何か?
税関とは輸出入品に「税」を課すことと、不正な輸出入品を水際で食い止める「関所」のような機関のことです。
ちなみに日本の税関では輸入品にのみ税金をかけています。
具体的には次の2点のことをおこなっています。
① 輸入品に2つの税を課している
・「政関税」
財政関税とは税収入を目的とする税金のことです。(消費税なども含む)
・「保護関税」
保護関税とは、国内産業を保護するために設けられる税金のことです。
② 不正な輸出入品の水際対策の関所としての取り締まり機関
税関は薬物・銃器・テロ関連物資・知的財産侵害物品などの不正な輸出入品が入ったり出たりしないように取り締まっています。
税関の検査は何をやるのか?
税関の監査は次の3つの検査を行います。
- 申告書の内容と輸出入品が合っているかの確認
- 法律で定められた基準に適しているのかの確認
- 申告外の品物がまぎれていないかの確認
税関検査にはどのような検査があるのか?
税関検査には次の3つの検査があります。
①「区分1(即時許可)」
区分1とは、簡易審査扱いで申告後すぐに輸入許可がされる区分のことです。
②「区分2(書類審査)」
区分2とは、税関に通関書類を提出して審査を受ける必要がある区分のことです。
③「区分3(書類審査+現物検査)」
区分3とは、書類検査の後に、税関員が現物検査まで行う区分のことです。
税関は3つの区分を使い分けて不正な輸出入品の検査を行っています。
そもそも税関で盗難車を発見することはできるのか?
結論からいうと、日本の税関で盗難車を発見することはできていません。
発見できても一桁台程度です。
自動車窃盗の認知件数に対する税関での摘発台数
具体的に、どれだけ税関で盗難車は摘発できているのでしょうか。
こちらでは令和元年から5年までの自動車窃盗の認知件数に対する税関での摘発台数についてご紹介します。
表:自動車窃盗の認知件数に対する税関での摘発台数
認知件数合計 | 乗用車摘発数 | |
令和元年 | 7,143 | 2 |
令和2年 | 5,210 | 10 |
令和3年 | 5,182 | 2 |
令和4年 | 5,734 | 1 |
令和5年 | 5,762 | 5 |
最悪なのは平成30年度は認知件数8,628台に対して乗用車の摘発数はなんと0台でした。
これが税関の現状です。
結論、盗難車を税関で捕まえることはほぼ不可能と思った方がよいでしょう。
税関で盗難車を発見できない理由
では、一体なぜ税関で盗難車を発見できないのでしょうか?
こちらでは税関で盗難車を発見できない理由について詳しくご紹介します。
① 日本は輸入検査は厳しいが輸出検査は緩いから
1つ目の理由は、日本は輸入検査は厳しいが輸出検査は緩いからです。
日本の税関は海外から輸入される薬物・銃器・テロ関連物資の国内への流入にもっとも目を光らせています。
なぜなら日本の治安を守るためです。
そのため直接日本の治安に関係がない、盗難車の発見には力を入れていません。
② X線検査装置が全国に16台しかないから
2つ目の理由はX線検査装置が全国に16台しかないからです。
X線検査装置とは、トラックにコンテナを積んだままX線検査装置の構内を通過するだけでコンテナをスキャンして、内容物が何かを確認できる装置のことです。
X線検査装置を使うとわずか15分程でコンテナの内容物の確認ができます。
実は税関で盗難車が発見されたケースは、ほぼX線検査装置でスキャンをした時です。
もしX線検査装置でのスキャンがなければ見つからなかったかもしれません。
ただしX線検査装置は日本には全国13の港に16台しかありません。
そのためX線検査装置のスキャンの網をかいくぐられると発見できないでしょう。
③ 書類に不備がないとそもそもX線検査はフリーパスだから
3つ目の理由は書類に不備がなければ、そもそもX線検査はフリーパスだからです。
税関での税関検査は3区分でおこなわれます。
- 「区分1(即時許可)」
- 「区分2(書類審査)」
- 「区分3(書類審査+現物検査)」
これまで輸出の実績があり不正がないと「区分1(即時許可)」がもらえます。
また「区分2(書類審査)」にまで進んでも、書類に不備がないとX線検査装置を使った検査までは進まずフリーパスで税関を抜けることが可能です。
なので、自動車窃盗団は「区分3(書類審査+現物検査)」にまで進まないように、できるだけ「区分2(書類審査)」で検査が止まるように精度が高い書類の偽装をおこなっています。
④ 輸出されるコンテナ数が多すぎるから
4つ目の理由は輸出されるコンテナ数が多すぎるからです。
2023年に日本から輸出されるコンテナは年間約142万基もあります。
1日あたりで計算すると約4000基です。
これほど多いと、X線検査装置が全国に16台しかないので盗難車の発見はほぼ不可能です。
まとめ
今回は、盗難車を「税関」は見抜くことができるのかについてご紹介しました。
税関は不正輸出入品の最後の砦ではありますが、残念ながら自動車窃盗対策の最後の砦ではありません。
極端な話、盗難車がコンテナに梱包されて税関にまで行ったら、ほぼ見つけることは不可能と思った方がよいでしょう。