そもそも、自動車窃盗は捕まるとどれくらいの刑罰が下されるのか?
現在、日本のどこかでランクルやレクサス、アルファードのような高級車が窃盗(せっとう)被害に遭っています。
これらの高級車は一般の人にとっては決して安くはありません。
もし窃盗犯が捕まれば当然厳罰化されると思いたいところです。
ところがそうではないのです。
では自動車窃盗は捕まるとどれくらいの刑罰が下されるのでしょうか?
今回は、自動車窃盗の厳罰化ができない理由について詳しくご紹介します。
① 自動車窃盗をするとどんな罪になるのか?
どんなに自動車の持ち主が注意しても自動車窃盗は後を絶ちません。
では自動車窃盗は捕まるとどんな罪になるのでしょうか?
自動車窃盗は捕まると「窃盗罪」になります。
窃盗罪とは、人がいない間に黙って人のものを盗む罪のことです。
もし人がいる時に、強引に相手からものを盗むと強盗罪に切り替わります。
➁ 自動車窃盗で捕まるとどれくらいの刑罰が科されるのか?
もし自動車窃盗で捕まってしまうと、一体どれくらいの刑罰が科されるのでしょうか?
窃盗罪の刑罰は次の通りです。
第二百三十五条によると
「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」
なので、自動車窃盗は最大「十年以下の懲役」または「五十万円以下の罰金」が科されるおそれがあるので絶対に止めましょう。
③ 自動車窃盗の刑罰と万引きの刑罰はどれくらい違うのか?
もし1000万円の高級車を窃盗した場合とコンビニで100円の商品を万引きした場合では刑罰はどれくらい違うのでしょうか?
答えはどちらも同じように十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金が科せられます。
実は法律的な観点からみると、金額に関係なくどちらも同じ窃盗罪なのです。
ただし実際に高級車を盗まれた方からすると、コンビニで100円の商品を万引きした場合と同じでは納得はいかないでしょう。
④ 自動車窃盗で刑罰が下る流れ
自動車窃盗で捕まってもすぐに刑罰が下るわけではありません。
こちらでは自動車窃盗で刑罰が下る流れについてザックリとわかりやすくご紹介します。
一般的に次の流れで自動車窃盗は刑罰が下されます。
- 逮捕
逮捕とは身柄拘束されることです。 - 送検
送検とは被疑者や事件を検察官に送ることです。 - 起訴
起訴とは検察官が事件について裁判所に訴えを起こすことです。 - 公判
公判とは刑事裁判のことです。 - 判決
判決とは裁判所が訴訟事件に決定を言い渡すことです。
判決で有罪・無罪が言い渡されます。
⑤ 裁判で有罪が確定してはじめて刑罰が下る
仮に高級車を盗んでいても、裁判が開かれ有罪が確定しないと無罪なので罰金刑も懲役刑も科せられません。
なので、最終的に刑罰が下るのは裁判で有罪が確定した時です。
また上告したり、やり直しがあると有罪は確定しないので無罪のままということになります。
⑥ 初犯の自動車窃盗の場合はどれくらいの刑罰が科せられるのか?
自動車窃盗にもいろんなタイプがあります。
数は多くはありませんがたまにあるのが「初犯」です。
初犯でよくあるケースが、若者などが軽い気持ちで友達に誘われて自動車窃盗をやってしまった場合です。
常習性・悪質性・組織性がなく、一度きりであれば「初犯」に扱われます。
当然初犯でも起訴されて、有罪が確定してしまうと十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金刑です。
ただし次の場合は、検察官の判断によって「不起訴」になることがあります。
不起訴とは、検察官が裁判所に対し訴えを起こさないことです。
初犯で次の場合、不起訴になることがあります。
- しっかり反省している
- 被害の程度が低かった
- 被害者との間に示談が成立している
- 悪質性が低かった
- しかたない動機があった
⑦ 常習性・悪質性、組織性がある自動車窃盗の場合はどれくらいの刑罰が科せられるのか?
自動車窃盗には常習性・悪質性、組織性がある自動車窃盗の場合があります。
いわゆる「自動車窃盗団」です。
では、自動車窃盗団の場合は、どれくらいの刑罰が科せられるのでしょうか?
結論は自動車窃盗団であっても、1回の自動車窃盗のみであれば、一般的な窃盗罪の刑罰である「十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金刑」で済みます。
ただし2回以上の犯行が立証されると「併合罪」が科され、刑罰がより重くなる仕組みです。
併合罪を科されると刑法第47条で「刑の長期を罪が重い方の刑期×1.5とする」となります。
仮に懲役10年に、併合罪が科されると懲役15年ということになります。
そのため現在、どんなに高級車を複数回盗んでも懲役15年が最高刑です。
⑧ 自動車窃盗の厳罰化ができない理由とは?
常習性・悪質性、組織性がある自動車窃盗団は、自動車の持ち主にとっては憎むべき存在です。
当然、捕まれば厳罰を科したいところです。
ただし捕まっても1台だけなら最高でも懲役10年、2台盗んだことが立証されてようやく懲役15年しか科せられません。
実は併合罪があることから、どれだけ自動車窃盗団が車を盗んでも、検察も国会も厳罰化をしない理由になっています。
まとめ
今回は、自動車窃盗の厳罰化ができない理由についてご紹介しました。 現在、日本全国で高級車は膨大な数が盗まれています。 ただしどんなに厳罰化をしたいと思っても、併合罪があることから、これ以上の厳罰化はないと予想されます。
参考文献
明治四十年法律第四十五号刑法より
第三十六章 窃盗及び強盗の罪
(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045第九章 併合罪
(併合罪)
第四十五条 確定裁判を経ていない二個以上の罪を併合罪とする。ある罪について禁錮以上の刑に処する確定裁判があったときは、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪とに限り、併合罪とする。(有期の懲役及び禁錮の加重)
明治四十年法律第四十五号刑法:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045#279
第四十七条 併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。